本の感想:宇宙のネロ/星新一ショートショート

児童書のおすすめ本

「自分の星のために、よその星のものを、勝手に持ち出そうということです」  ー 『待機』より
著者の星新一は、常に人類を客観的にみている。
宇宙のネロ
星 新一(著)
宇宙のネロ (星新一ショートショートセレクション 2)
読むと10分以内に、どんでん返しが訪れる話が、星新一の描くショートショートと呼ばれる物語だ。
わたしは、高校時代にこの星新一のショートショートに出会った。
物語の短さに加えて、必ずどんでん返しが待っている展開。使われている語の分かりやすさ。
どれをとっても児童書として推薦できる本だ。とにかく大人が読んでも子供が読んでも面白い。必ず次の話が読みたくなるから。


原稿用紙にして10枚程度の短編が17編も収録されている本が「宇宙のネロ」だ。
原稿用紙3枚分しかない「オアシス」というショートショートもこの中には収められている。
長編小説とこうしたショートショートを書く労力はどちらが凄いんだろう、という議論はさておき、星新一の紡ぎ出す物語は一貫している。
最後には必ず読者を欺くどんでん返しが待ち受けているからだ。
これが知りたくて、つい次の話を読んでしまう。
冒頭のショートショート『待機』は、現代の地球で各国が資源を取り合うことを茶化しているようだ。
舞台は、宇宙。
地球には残り少なくなった資源を探索しに、新しい星に降りたつ宇宙船の話だ。
その星で、地球人たちは、リスに似た宇宙人と出会う。
宇宙人に何をしに来たかを聞かれ、「いろいろな資源を採集しにきた」と答えた地球人たちは、宇宙人に、
「なにも、こんな遠くまで、取りにくることもないでしょうに」
と言われてしまう。
原始的だと思われたリスのような宇宙人は、実は…
「このごろのテレビ番組の、つまらないこと。…」で始まる、表題作『宇宙のネロ』も何十年も前に考えられたとは思えない新鮮さだ。
まさに現代のテレビ番組はつまらないから余計に引き込まれる。
正体不明の宇宙人。面白いことをせよと人類に要求をつきつける。
面白いことをしないと、地球を破壊していくのだ。
そこで人類はテレビ番組をみせようとする。しかしこの宇宙人は記憶力がよく、絶対に同じ番組を流したら駄目なのだ。
最後にネタがつきた地球人は「戦争をしてみせる」という考えにいきつく。しかし、このままでは人類が滅亡してしまう。
ある人物のアイデアが地球を救うという、ありえないようだがどこか現実味のある物語だ。
星新一は長編小説も書いている。
「ブランコのむこうで」なども推しておく。

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