本の感想:僕は君たちに武器を配りたい

僕は君たちに武器を配りたい
瀧本哲史(著)

僕は君たちに武器を配りたい

若者向けに現代社会に生きる知恵を書いた本。
わたしは著者のいう若者ではないが、気になったので読んでみた。

本書の言う「武器」とは、銃や兵器のことではなく、現代資本主義社会で生きていく上での「投資家的な生き方」のすすめのことなのだ。もちろん単純に株やFX、不動産による不労所得を得る方法などではない。投資家的に<考えて>、投資家的に<行動する>うえでの「戦い方」を著者は武器として提示している。
その「戦い方」として例に挙げているのが「ゲリラ戦」だ。
先が見えない時代だからこそ、正規軍の戦い方ではなく、状況に応じて戦い方をサッと変える「ゲリラ」的な戦法を身につけよう、と著者は言っている。

余談としてあげられたオンラインゲームについて、
「多くの人がハマるのは、その世界では「努力」の有効性がまだ存続しているからではないだろうか。」としている。
立身出世ができるのは、現実世界だったはずだが、現在ではオンラインゲームの中だけになってしまったということらしい。皮肉だ。

資本主義の仕組みや投資については、わかりやすい言葉で若者に投げかける。

「自分の少数意見が将来、多数意見になれば報酬を得られる」

「『投資』とは、お金を投資することだと一般的に思われているが、
本質的な『投資』とは、自分の労働力や時間、人間関係を投資することでもあるのだ。」

若いうちに意識をもって行動し、企業せよという本は多くあるが、本書はその類の本ではない。
もっと本質的なこと、生き方とは、人間とは、という部分が奥底にあるような気がする。

それは本書で最後に紹介されている吉野源三郎(著)「君たちはどう生きるか」の一節に集約されているように思う。
銀座のデパートの屋上で眼下を蟻のように動き回っている人々や車をみながら主人公のコペル君がおじさんと会話するシーンだ。わたしは高校生のときにこの本を読んだ。
現代の第一線で活躍されているような著者が、この70年以上も昔に書かれた本の一節を持って締めの言葉としているのは、本書もまた遠く未来を見据えた考え方を若者に伝えようとしているからであると思う。

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