生きているかぎり、悩みはつきない/相田みつを「なやみはつきねんだなぁ」を読んで

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いのちのことば なやみはつきねんだなあ
相田みつを(書)/佐々木正美(著)

わたしは、「相田みつを」に対して、勘違いをしていました。
わたしはそれまで、相田みつをは「書が下手」で「詩がうまい人」なんだと思っていました。
東京の新宿あたりで、相田みつをの詩画の展覧会があり、見に行ったときのことです。


「相田みつを」は、書も上手く、詩も上手い人でした。
ピカソがそうだったように、相田みつをは、わたしたち凡人がみても上手な書画を書こうと思えば、書けるのです。
展覧会で見た相田みつをの書画の作品は、有名な「にんげんだもの」や「一生感動一生青春」などとともに、仏教の経典が小さな書画でびっしりと書いてありました。
その経典の書画はどれもが、お手本のようでした。
やはりピカソがそうだったように、本人の心の目からみると、書は同じひらがなでも違う形をしていて、大きさも前後の言葉によって変わっていくのです。そうして、相田みつを独特の詩画が完成するのでしょう。

言霊(ことだま)といった方が正しいかもしれません。
本書のタイトルは、「なやみは つきねんだなあ」ですが、この詩画の後には「生きているんだもの」とつづきます。
生きている限り、なやみはつきないのです。
これを「相田みつを」は、自然なことだと言っているのです。

わたしがこの本をいいと思う理由は、2つあります。
ひとつは、相田みつをの詩画とその解説が佐々木正美という精神科医になされている点です。
相田みつをの詩画は、そのままみても心に訴えてくるものがありますが、自分の見方だけでなく、別の人の意見もあるとより一層この詩画は、深みを増すと思うのです。

ふたつめは、本の文字が大きく読みやすいことです。
これは、わたしが歳をとって目が悪くなってきたからではありません。
この本は、大活字文庫(株式会社大活字)といって弱視者や低視力者向けの本の中の一冊です。
同じ内容で普通の大きさの文字の本が出版されていますが、わたしは、文字の大きいことが、この本に合っている気がするのです。
詩画と同じく、でっかい字が心を打つ気がします。
いままで小説や文庫本等で文字の大きさについて考えたことはありませんでしたが、その本に合った文字の大きさもあるのではないかと思います。
精神科医佐々木さんの言葉から

人間は死の直前まで、夢、希望、目標を抱き続けるものである。欲求不満や悩みは尽きないのである。それがよいのである。

子供は親や周りの大人たちが「思っている」、あるいは「感じている」とおりに育つものだが、「望んでいる」とおりには容易に育たない。ー中略ー「心配だ、心配だ」といって「信じてやらない」から、「信じられない」子どもに育ってしまうのだということを、本当にたくさんの事例から教えられてきた。

結局、人間は、自分を語っているわけです。例えば「この景色、きれいだね」と言った場合、それは、その景色をきれいだと感じる自分を語っているわけです。人間が一番大きな関心をもっているのは人間なんです。人間は、人間関係を失ったら、存在の意味や価値をうしなうのだと思っています。

わたしの実家には、父が酔っぱらったときにあけた壁の穴があります。
その壁の穴には、わたしが障子紙に相田みつをの書をわざと真似て書いた「つまづいたって いいじゃない にんげんだもの」が貼ってあります。
「下手」に真似たことを、恥ずかしく思っています。

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