本の感想:デルトラ・クエスト 2〈3〉影の王国/秘密を秘密にしている間、人は相手のことを想っている

デルトラ・クエスト 2〈3〉影の王国
エミリー・ロッダ(著)
デルトラ・クエスト II〈3〉影の王国
「だれかに秘密を打ち明けてしまえば、心はかるくなる。でもそのぶん、相手をくるしませることになるかもしれない」
デルトラクエスト1(全8巻)から続く、デルトラクエスト2(全3巻)の最終巻です。
主人公リーフ、森の少女ジャスミン、元デルトラ兵バルダたち3人をとりまく「ある秘密」がテーマです。


今回主人公リーフたちは、タイトルにもある通り「影の王国」に、乗り込みます。
デルトラ王国から連れ去られた仲間たちを取り戻すため。
影の大王が嫌う「ピラの笛」を手に入れ、いよいよ影の王国に乗り込む3人ですが、お互いに「ある秘密」をもっているようです。
特にリーフとジャスミンの間には、お互いに知られてはならない「何か」があるようです。
デルトラクエスト1の後半から、リーフとジャスミンの間には、「旅の仲間である」それだけではないお互いの気持ちが、描かれていたと思います。
秘密をかかえ、敵の本拠地「影の王国」に乗り込んだリーフたちは、影の工場にたどり着きます。
そこで、リーフたちは、敵兵である影の憲兵団が、10人1組で製造されている事実を知ります。
しかも、影の憲兵団は、完全にモノ扱いなのです。
彼らは、期限がきたら、同じ顔かたちのものと交換されるだけ。
わたしたちが、日常使う工場製品のように「使い捨て」なのです。

「使い捨て」の人たちを、影の王国を舞台に描いていますが、これは現代絵巻なのです。
時間は命だという言葉を、聞いたことがあります。
なんでも効率よく手に入る社会に暮らして、命である時間を買い取られていることはないでしょうか。
リーフたちとその仲間が使う時間は、決して自分だけのためではない気がします。
本当の意味での「自分自身の生を生きる」というのは、リーフたちのように、命をかけて「何か」をすることなのだと思います。
「ある秘密」とは何なのか。
リーフたち3人は、影の大王に打ち勝ち、無事デルトラ国民を救出できるのか。
このデルトラクエスト2最終巻のあと、デルトラクエスト3(全4巻)へと物語は続きます。
主人公リーフの父親の代から始まったこの物語は、このデルトラクエスト3をもって終結します。
印象に残った言葉

「本当の色なんて、ないのです。
 一つの石が、みる人によってまったく違う色にうつる…
 それは、人についても言えること」

わたしたちは、「お互いに違う」ということを、もっともっと認識しないといけないのかもしれません。

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