本の感想:俳句ステップ!

児童書のおすすめ本

俳句ステップ!

おおぎやなぎ ちか(作)
イシヤマ アズサ(絵)

わたしは俳句が好きなので、タイトルを見てすぐに手に取った。
表紙絵も少し気になる。表紙の小学生らしき女の子2人が対照的な顔つきなのも何やら気になるではないか。

読み終えて分かったが、表紙絵は、物語の最後のシーンを絵にしたものだ。わたしは児童書は挿絵も大事だと思っている。その点、『俳句ステップ!』はタイトルも秀逸ながらそれに劣らず挿絵もこの物語にぴったりだ。

主人公は当間七実(とうま ななみ)という小学三年生の女の子。公園で出会ったおばあさんに誘われひそかに俳句を作っている。俳句を扱った物語だけあって、随所に主人公の七実や同級生が作った俳句、おばあさんが作った俳句が登場する。これらの俳句自体が、この物語の核となってくるので紹介するのは控えるが、最初のページの句だけ面白いので紹介する。

バラを見るよりもだんごをたべたいぞ。

『俳句ステップ!』より

この句から主人公七実の人物紹介、同級生紹介に入っていくのだが、展開がスピーディーで読んでいて飽きさせない。

もちろん高名な俳人、松尾芭蕉、小林一茶など句も小学校の授業シーンで登場してくる。

夏草や 兵どもが 夢の跡

松尾芭蕉

雪とけて 村一ぱいの 子どもかな

小林一茶

俳句に関する説明を七実が出会ったおばあさんや学校の先生がするシーンは、わたし自身俳句についてもう一度学んでいるような気分になった。(いや実際に俳句を学ばせてくれる本だ)特におばあさんは季語を大切にしている。わたしは自分が詠んだ俳句に季語が無い事が時々あるので恥ずかしくなってしまった。

最初は淡々とした日常。しかし、市の俳句大会で大賞をとった人物がクラスから出たことを先生が紹介するところから事態は動き出す。先生が読み上げた俳句は七実が以前作ったもの。ところが、七実自身は俳句大会には応募していない。そして先生が読み上げたクラスメイトの氏名は……。たぶん、あっという間に読み切ってしまうはずだ。

七実やクラスメイト、おばあさんが物語の中で詠んでいる数々の俳句は、作者であるおおぎやなぎさんが当然詠んでいるはず。さりげなく登場するこれらの俳句たちが、あたかも小学生やおばあさんが詠んでいる句に感じて物語に入り込んでしまう。作者の俳人としての力量に感嘆するばかりだ。
そして最後の句。この物語を五七五で詠んだかのようなさわやかな俳句で締められる。
わたしの好きな俳句の一つになりました。

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