中国・アメリカ 謎SF
柴田元幸/小島敬太(編訳)
個人的に、コンピュータに意識は生まれるか?を扱った冒頭の「マーおばさん」が一番面白い。
仕事である新型のコンピュータのテストを依頼された主人公とその新型コンピュータである「マーおばさん」とのやりとりが哲学的かつ刺激的だ。
電源を入れる。次に砂糖を入れる…と続く「マーおばさん」の起動手順は、笑ってしまう。しかし、すぐに「あっ、そういうことか!」と納得する。とぼけたタイトルとも相まって、最後に「人間ってなんだ?」と考えさせられる。まさにSFを感じる一作品だ。
その他、本書でわたしが気になった作品は、すべて中国人作家のものだった。
「焼肉プラネット」は日本なら筒井康隆が描きそうなスプラスティック・コメディー調の作品で笑いと同時に恐怖も感じる。
猫と飼い主の別れを扱った「猫が夜中に集まる理由」は、日常から一気にSF設定に切り替わるのだが、違和感を感じない。そして、しみじみと味わい深い。
かたやアメリカ人作家。
「曖昧機械」「降下物」などわたしのように読解力が低いと設定を理解するのに時間が掛かり、理解したころには物語が終わっている。結末がはっきりとしない所は現代のアメリカのかかえる不安を象徴しているような気がしないでもない。最後に結論があるのではなく、世界観を楽しむ作品。わたしがこうした話を好まないだけで、これらを好むSF好きは多いに違いない。
日本でほぼ未紹介の中国・アメリカ双方の作家を紹介するというテーマでSF短編7編を集めた本。
アメリカ人作家3編、中国人作家4編と中国側が一作品多いのだが、SF的面白さという点で、現代中国の威勢をそのまま感じた。
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