本の感想:爪と目

爪と目
藤野可織(著)

爪と目

2013年(第149回)芥川賞ということで、マスコミが取り上げなくなった頃に読んでみた。
<純文学ホラー>と帯には書かれていたが、純文学を差し引いても「ホラー」ではないと感じた。

芥川賞を受賞した『爪と目』他2編が収められている。わたしは、どちらかといえば最後に収録されている『ちびっこ広場』が面白かった。親と子というものを取り上げた傑作だと思う。

『爪と目』
<わたし>と<あなた>の二人称は、文体として怖く感じさせる面では貢献しているが、設定に無理がある。どうしても<わたし>の方につっこみを入れたくなってしまう。

『しょう子さんが忘れていること』
川端君の設定とそれに対するしょう子さんの態度に無理があって小説に入り込めなかった。でもなんとなく怖いのは、川端君の行動に意味を見出せないからかもしれない。

『ちびっこ広場』
親ってこういうものだよなあ、と思う。息子に対する主人公の母親の行動で。著者の藤野可織は、親でもあるのだろうか。もし、そうでないならこの描写は想像力がある。物語の最後は、「えっ。ここで?」というところで終わる。「もう少し、その先が知りたい!」というところで終えたのが、この作品がもつ優れたところなんだろうと思う。

わたしが、3つの話で一番怖かったのは?と聞かれれば『ちびっこ広場』と答える。
子供時代の想像力ある怖さを含んでいるからだ。

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