銀河英雄伝説4 策諜篇
田中芳樹(著)
まことに、人間は、みずからの意思によってのみ歴史と世界をうごかすものではないのだ。花粉をはこんで荒地にあたらしい花を咲かせる風に、意思はないが、たしかにそれは風の功績なのである。
ヒルダ
最後に生き残るのはおれだ、と、ルパートは思った。もっとも、誰でもみんなそうおもっているにちがいないが……。
盗賊に三種類ある、とは、誰が言ったことであっただろうか。暴力によって盗む者、知恵によって盗む者、権力と法によって盗む者…。
「思うのは自由だが、言うのはかならずしむ自由じゃないのさ」
ヤン・ウェンリー
「ユリアン、現在の状況は古来から固定しているものと吾々は誤解しがちだ。…」
「なあ、ユリアン。どれほど非現実的な人間でも、本気で不老不死を信じたりはしないのに、こと国家となると、永遠にして不滅のものだと思いこんでいるあほうな奴らがけっこう多いのは不思議なことだと思わないか」
「ユリアン、国家なんてものはたんなる道具にすぎないんだ。そのこさえ忘れなければ、たぶん正気をたもてるだろう」
ヤンがユリアンに対して
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