本の感想:旅の絵本/安野光雅

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旅の絵本
安野光雅(画)
旅の絵本 (1)

人間は迷ったとき必ず何かを見つけることができるものです。わたしは見聞をひろめるためではなく、迷うために旅に出たのでした。 - 著者 あとがきより

人々の暮らしを遠方から描いている分、どこに目線を移すかは見る人にゆだねられる。
見ているといつの間にか何かを探している自分がいる。そこがいい。まるで旅をしているようだ。


上空から見下ろしたような構図の風景画が新鮮だ。
著者である安野光雅(あんのみつまさ)がヨーロッパに旅したときの様子を説明の一切ない絵として構成している。
『旅の絵本』はシリーズ化されており、2012年の現在7巻まで出版されている。最新巻は中国編となっている。
わたしはこの絵を見たとき、絵の視点に疑問をもった。どう考えてもこの絵の視点から見ることはできないからだ。
鳥になるかあるいはハングライダーで飛んで上空から見るとこんな風景を見ることは可能だが。
本書の魅力はこの視点にあると思う。
巻末には一つ一つの風景についての簡単な説明がある。
そこには著者がはじめてヨーロッパに旅をしたときの飛行機から見た異国の風景のことが書いてあった。
ああ、これがその視点なのかと思った。
わたしにも経験がある。
はじめて飛行機で異国に旅をしたとき、眼下にこれから降り立つ世界が見えたとき。
川がみえる。山が地平線まで広がって、森や林や畑がみえる。人々の住む家がみえる。
ここにもその国の生活があると感じ、なぜかとてもわくわくしたことを憶えている。
飛行機から見下ろす世界は、手を伸ばすほどには近くない。人々の生活の音は聞こえない。それがまた想像力をかきたてた。
どんな人たちがいるのだろうか。
どんな生活をしているのだろうか。
『旅の絵本』はそんなわくわく感をもった作品だ。
ただ眺めているだけでいい。そんな本だ。

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