本の感想:はだしのゲン/中沢啓治(画)

面白かった本(その他)

なぜこんなリアルに被爆者の心情や戦後の困窮する生活シーンを描けるんだろうと思ったら、「はだしのゲン」は作者中沢啓治の実体験を漫画にしたものだった。自らも被爆者である中沢氏は原爆で父、姉、弟を亡くしている。これは「はだしのゲン」の冒頭そのままである。

「はだしのゲン」は小学校の図書館に置いてあった本という印象が強い。
漫画本なのになぜ小学校の図書館に置いてあるんだろう?という疑問は読めば払拭される。広島原爆を生き延びた主人公の小学生ゲンこと中岡元とその家族を中心に戦後広島での極限生活が克明に描かれているからだ。

わたしが読んだ完全版は単行本タイプのぶ厚い本だったが、本の重さ以上に中身は重い。
広島原爆の爆風でガラスが体中に突き刺さっている人や皮膚が焼けただれて見るも無残な人々の描写など目を背けたくシーンの連続だ。しかも目を背けたくなるシーンは途切れることは無い。読んでいて辛くなる漫画だ。

作者中沢啓治氏の視点は一貫している。大きく分けて2つ。
1つは戦争を始めるのは国の指導者たちであって、戦争中・戦後いつもひどい負担を強いられるのは庶民たちであること。
2つ目は戦争が引き起こす人々の争いの無常さ。
漫画の中ではたびたび戦争によって引き起こされた庶民同士の争いや差別が具体的に描かれる。

例を挙げると、

・近づくと原爆病がうつるといって同じ広島市民が原爆の被害者に向ける差別。
・日本人が捕虜として連れてこられた朝鮮人を人間扱いしない様子。
・アメリカ兵と付き合う若い女性に対する世間の目。
・田舎の子供が爆心地から逃れてやってきた都会の子供の身体の傷や家庭状況を馬鹿にする様子。

などなど。

途中、激しい暴力や非情なシーンの連続に読むのをやめようかと感じることもあるが、やはり最後まで読むべきだろう。唯一の救いは主人公ゲンの明るさだ。逆境でもくじけず生きていく姿はすがすがしさを覚える。そして「はだしのゲン」を読む前と読んだ後では世界が変わって見えるはずだ

ゲンたちに比べれば今の日本や自分たちの生活なんて…ときっと考えるはず。
「はだしのゲン」を読んだ人たちが、もっと人にやさしくしようとかちゃんと生きていこうと行動に移すことが出来たら、作者の中沢啓治氏の怒りも天国でおさまってくれるだろうか。

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