異国トーキョー漂流記
高野秀行(著)
軽妙な文章だが、軽薄ではない。ここで語られる著者が出会った8人のガイジンたちとのやりとりはどれをとっても面白く、最後になぜかホロリとさせる。
わたしが生まれた頃より、今の日本はガイジンに出会う機会が多くなった。
しかし、その人たちの考えていることや、人となりを知る機会はほとんどない。特に「変なガイジン」に対しては。
冒険家?でもあり、翻訳家?でもあると思われる著者高野秀行が、日本で出会ったガイジンについて語った本が「異国トーキョー漂流記」だ。
「自分」という存在がどういうものか知ることができるのは他人が存在しているからだが、本書もそんな「自分」を見せてくれる存在かもしれない。
著者は、本書以外でも世界を冒険し、かなりむちゃなことをしている正真正銘の冒険家である。
しかし、大学時代、アフリカのコンゴに幻の珍獣を探しにいくために、現地のリンガラ語を憶えようと教えを請うたコンゴ人の話す日本語が高級すぎて理解できなかったり、フセイン政権下のイラクで一年生活をするという目標をたて、アラビア語を勉強しようと日本在住のイラク人を見つけたのだが、最終的にはそのイラク人とその仲間の日本での仕事探しになってしまったり、彼女との別れをスペイン語の先生に見透かされていたり、と決してかっこいい冒険家ではない。
そして文章がなにより面白い。
自分を「国際人」であるというレッテルを貼っていた若き日を茶化し気味に書いた「スペイン人は『恋愛の自然消滅』を救えるか!?」でもかなりの冒険家としての「かっこわるさ」と「文章の面白さ」が同居している。
この人の他の冒険潭がききたい、と思わせるものがどの章を読んでもあるのは、きっと著者高野秀行のガイジン、いや人間に対する尊敬の念が感じられるからかもしれない。
わたし自身も著者があとがきで述べているように、ガイジンたちから見たら、「変なガイジン」であって、旅をしているのは異国からきた外国人ではなく、日本にいるわたし自身であって欲しいと思う。
※この本は、『本と集う会』でHさんより頂いた本です。ここにお礼を述べさせて頂きます。ありがとうございます。
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