谷村新司(著)
コンサートでのトークが上手である、という情報を少なからず知っていたが、それは本当だと感じたのは、「はじめに」の冒頭部分を読んだ時だ。
いつのまにかさまようことから少しずつ離れ始めてしまう。でも心ではいつも放浪していたいと願っている。
読んだ瞬間、彼の「昴」という名曲が思い浮かんだ。
谷村新司と言えば「昴」だ。
その次に「チャンピオン」「冬の稲妻」...実はそれ以外の彼の曲をわたしは知らない。でも歌を歌う人だと言う事は知っていた。本も出していたとは。
厳密に言うと、本書は直接谷村新司が書いた本、ではない。カセットテープに吹き込んだ谷村新司のインタビュー内容をライターが書き起こした本である。
すでにこの本は2014年の時点で新刊本として発売はされていない。わたしが手にしている本は1993年に出版された初版本だ。図書館で借りた。そう考えると、本と出会う場として図書館というのは大事な存在だ。
谷村新司は、すでに60歳を越えているが、この本を出したのは40代半ば。本書では、人生に対する考え方を「音楽について」「夫婦の関係について」「仕事について」「挑戦する意味について」等様々な角度から語っている。
ぼくは簡単にできることに興味はない。
人生は折り返し地点のあるマラソンではなく、ぼくはワンウェイマラソンだと思います。
などの言葉に象徴されるのは時代というものをどこか自分と切り離して考える谷村新司のものの見方だ。熱中することと俯瞰することをバランス良く行き来してるのだろうと思う。
洗練された考えを持つ人、これが本書を読んでの谷村新司に対する感想だ。
これを書いた時代が20年前であることを鑑みるに、いかに彼が時代を先取りしていたかが分かる。それは、自分と時代とを切り離して考えることが出来る人だけが持つ「技」に他ならない。
コメント