父への手紙

お父さん。お元気ですか?
Mom, Look at that air plane!
【写真/2010年10月16日 飛行機をみている】
突然ですが、お父さんは、運が良かったと思います。
第2次世界大戦、米軍の長崎への原爆投下で生き残ったのですから。
あのときの原爆で、多くの日本に住む人々が、悲惨な死を遂げたと聞いています。
当時のことを、わたしに話したとき、お父さんは、こう言いました。


「原爆が落っこちたとき、5歳だった。俺は原爆の落ちたところから10kmくらいのところにいたが、山の向こう側だったので助かった」と。
だからお父さんは運が良かったんだと思います。
お父さんは、今71歳です。
この年まで、好きなお酒を好きなだけ飲み、煙草も辞めることなく生きてきたんですから、健康じゃなくなっても運が良かったと言えるのではないですか。
お父さんがいなかったら、わたしもわたしの妹2人もこの世にはいません。
わたしの子供たち2人もこの世にはいないことになります。そして、このさき生まれてくるであろう、お父さんのひ孫やその先の子孫にも存在がゆるされないのです。
小学生のころ、お父さんに毎月長野の長谷川書店に連れて行ってもらいました。
わたしと妹は、そこでいつも本を1冊ずつ買ってもらいました。おかげでたくさんの本を読むことが出来ました。
わたしの子供たち2人も本が好きです。
わたしがいつも本を読んでいるので、真似をしているのです。
本と出会っていなければ、わたしの人生は、今よりも、もっとつまらないものになっていたと思うので、有難いことです。
お父さんの言葉で思いだす言葉があります。
「おもちゃは、買ってやらない。でも本だったら、どんなに高い本でも買ってやる」
酔っ払ってわたしに言った言葉だったと思います。ときどき思い出します。
お父さん。
わたしは、平成23年3月11日におきた大地震で生き方が変わりました。
「今」を大事にするようになったのです。
それまでは、自分が死ぬなんて、まだまだ先のことだと思っていました。
それこそ他人事だと考えていたのです。
わたしは、あの日生まれてはじめて死を意識しました。
立っていられないくらいの揺れの後、地面の奥、地球の奥のほうから聞こえてきた「ごごごごごぅ。」という何か大きな生き物が飛び出してくるような音が忘れられません。
「ああ。自分も死ぬのだなぁ」と思いました。
今までのわたしは、平和の上に寝転がって大事なことを見て見ぬふりをしていた気がしました。
あのとき突然、「今、この時しかない」と思うようになったのです。
確かなものは今しかないのです。お父さん。
「今」を生きようと決めたとき、わたしにとって何が守るべきもので、何を信じるべきなのかがはっきりとした気がします。
わたしの家族は、わたしにとっては、宝です。それこそわたしの命より大事な気がするのです。
お父さんにも、お父さんの大切な宝があると思います。
わたしは、お父さんに感謝しています。
お父さんの子供に生まれたことを誇りに思います。
育ててくれて、ありがとうございました。
修一

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