本の感想:読んだふり本1位『一九八四年』

読んだ本

近未来を予見したSF小説として有名なジョージ・オーウェルの『一九八四年』。
多くの読者や批評家に「未来を予見している」として持ち上げられた小説だ。

ちなみに『一九八四年』に対する一般的な感想は、

「この本に書かれたことが現実になりつつある」

という具合だ。

本書に登場するビッグ・ブラザー(通称BB)は、一般市民を常時監視する存在として君臨している。しかも市民はビッグ・ブラザーに歯向かうことは到底できない。

現代社会もそうなりつつあるんじゃないか?

てな訳だ。

まあ、確かにそれも一理ある。
しかしここは一つ、別の視点で感想を述べたい。

わたしの手元にあるハヤカワ文庫版『一九八四年』の巻末に訳者あとがきがある。
そこには、「読んでいないのに、読んだふりをしてしまう本」として本書が紹介されている。

著者ジョージ・オーウェルの本国である英国での「読んだふり本」一位がこの『一九八四年』らしい。

要するにみんな買っているから買ったけど結局読まなかった本らしいのだ。(日本で言うなら村上春樹か?)

批評家が「これは読むべき!」などと持ち上げて何となく売れてしまった本、などと言っては言い過ぎかもしれないが、とにかく読んだふりをしている人が多い本らしい。

いや実はわたしもそうだった。(現時点では読んでいるが、読んだふりで人と話を合わせたことが過去にある)

話題になっているからと『一九八四年』を買ったが、読んでみたらつまらなかった。
だから読むのを辞めた。
こんな推理も成り立つ。(これも村上春樹だ!)

実際にわたし自身は本書をそれほど面白いとは思わなかった。
同じように近未来を予見した映画『マトリックス』は、ほぼ『一九八四年』に近いストーリー構成といえる。

大きく違うのは、主人公が勝つのが『マトリックス』で、主人公が負けるのが『一九八四年』かもしれない。

ただ『マトリックス』の方がずっと分かりやすいし、ストーリーも面白い。ついでに言うならアクションもあってかっこいい。

主人公のネオが、仲間と共に支配者をかっこいいアクションで倒すのが、『マトリックス』
主人公が、仲間に最後は裏切られ、とくにこれといったアクションシーンもなく支配者に支配され続けるのが『一九八四年』だ。つまらなそうでしょ。

ここまでは、『一九八四年』を酷評する形になってしまった。
最後に罪滅ぼしのため、『一九八四年』で一番面白いと感じたある考え方についても述べておきたい。

『一九八四年』の主人公が住むオセアニアという世界には、一つの政府が存在する。
われわれの住む世界同様に国防省や文部科学省のような政府機関があるのだ。

本書で伝えているのは、各省庁が何をする機関かは、各省庁の名前を反転させて考えれば良い、というものだ。

例えば、本書で「平和省」というものが登場する。
反転させれば「戦争省」。これが実際の中身というわけだ。
平和を維持するための機関ではなく、戦争を相手国にふっかける機関ということになる。

面白い!

だからアメリカ国防総省は、アメリカという国を守る機関ではなくアメリカという国が他国に戦争をふっかける機関ということになる。

分かりやすいではないか。

となると日本の「自衛隊」は「軍隊」か。
「経済産業省」は、民間の経済発展に貢献するのではなく、民間からお金をまきあげて国の発展に貢献とでも訳せばいいのか。

公共機関や大きな言葉を見る目として、「言葉は反転させて考えよ」とは、この本で唯一為になった考え方だ。

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