洞熊学校を卒業した三人
宮澤賢治(著)
ミキハウスは子供服を売っているだけかと思ったら、絵本も出していた。
ただ、本書を絵本と読んでしまうと語弊があるかもしれない。絵本のように絵の中に文がある体裁をとってはいるが、文字の量が多い。
宮沢賢治の短編を一遍抜き出してページ毎に絵を入れました、という方が正しい。
わたしは、冒頭を読んだとき、絵に違和感を感じた。なぜなら、洞熊先生や生徒の赤い手長の蜘蛛、銀色のなめくじ、顔をあらったことのない狸など特徴的なキャラクタを頭の中で想像する機会を奪われてしまったからだ。
ただ、読みすすめていくうちに、この物語の残虐性に心を奪われ、自然と描かれているキャラクタがすんなりと頭に入ってくるようになった。読み終えたあとは、物語に本書の絵がぴったりと合っているように感じた。
自然からすれば、極めて当たり前な虫や動物たちの行為が描写されている。弱肉強食。食ったり食われたり。描写もストレートだ。「かたつむりは死んでしまいました。そこで銀色のなめくじはかたつむりを殻ごとみしみし喰べてしまいました。」
<みしみし>という音が怖い。絵からもみしみしとした感じが伝わってくる。
宮澤賢治節とでもいうのだろうか、ユーモラスな言い回しが登場する生徒三人のキャラクタたちにもみられる。
赤い手長の蜘蛛の「あぁかいてながのくうも~」と歌う場面。
銀色のなめくじのがいじわるなことをするときの掛け声「ハッハハ。」
顔を洗わない狸の唱えるお経「な。なまねこ。なまねこ」
どれもリズム感があり、声に出して読みたくなる。
絵が多いため、小さい子の場合は、大人が読んで聞かせる感じか。
ふだん本を読む小学校中学年以上なら自分でも読めると思う。
これが自然だよ、と宮沢賢治はいつもわたしたちに教えてくれる。
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