どんど焼きの思い出

子供の頃、正月明けの15日は、「どんど焼き」という行事があった。
正式な名前は分からない。子どもの頃は適当に「どんと焼き」、「どんど焼き」、「どんどん焼き」などと言っていたように思う。

昨年の正月に買ったダルマや羽子板、古い正月飾りを地区ごとの決められた場所に持ち寄って、15日の夜に一斉に焼くのが「どんど焼き」だ。
古い正月飾りは、15日が近づくにつれ徐々に増えていき、当日夜には、積み重なって小高い山のようになっていた。
夜、どんど焼きの山に火がつけられる。
大人たちは無病息災を願って、火の中にお賽銭を投げ込んだ。「どんど焼きの火に投げ込まれたお金は、その日のうちに取ってはいけない」という暗黙のルールがあった。

子どもたちは翌日の朝、どんど焼きの焼け跡に向かう。灰の中をかき分けて運良くお賽銭が見つかればそれがお小遣いになる。正月にもらったお年玉よりも少ないが、真っ黒に焼けた50円玉など拾おうものなら、凄く得した気分になった。

地方によって言い回しが違う。どんど祭という地域もある。わたしが長野から茨城に越して、最初の正月が過ぎた頃、妻に「どんど焼きってどこでするんだい?」と聞いたことがある。妻は「してないよ」と答えた。
日本全国どこでも「どんど焼き」をしていると勘違いしていたわたしは、「そうか」と寂しい気分になった。

前の晩、あんなに大人たちがお賽銭を投げ込んでいたのに、翌朝わたしがいくら灰をかき分けてお金を探しても、いくつも見つけられなかったのはなぜだろう。わたしが探しているとき、不思議と近所の誰とも会う事がなかった。

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