いつかのバトル

バス時刻表 そういう気持ち

学生時代の通学中にも色々とバトルはある。
これはわたしの妻が高校生だった当時の話だ。

彼女は当時、バスで通学していた。彼女と同じ中学の同級生の多くが、同じバスで少し都市部の高校(といっても十分田舎だが)に通っていた。
中学校の同級生ということもあり、帰りのバスで何人か乗り合わせることがある。田舎なのでだいたい降りるバス停は皆同じ。そこでは、わたしには想像もつかないようなバトルが発生していた。

バスには大抵「お降りのかたはこのボタンを押してください」と書いてあるボタンが席の近くにある。押すと「次とまります」と自動音声で車内アナウンスされるあれだ。このボタンを押すタイミングで迷う人は多いだろう。(わたしもその一人だが)なんと彼女の同級生たちの間では、このボタンを誰が一番最後まで押さずにいられるか、という世にも奇妙なバトルが自然発生していたようなのだ。

「つぎとまります」ボタンを最初に押してしまった人が負け
誰かがボタンを押すまで耐えた人たちが勝ち

というシンプルなルール。(でも変)
これはチキンレースの一種だろうか。
バス停までの距離、バスの速度、他人の挙動…あらゆる情報を総動員してなされる無言のバトルは想像するだけでも息を呑む。

このバトル話にはオチがある。
ある日、誰も「つぎとまります」ボタンを押さなかった。(ある意味、全員が勝者だ!)
当然、バスは何事もなかったかのようにバス停を過ぎる。
次のバス停で誰がボタンを押したのかは知らないが、同級生全員が降りたそうだ。そして先ほど降りるはずだったバス停まで歩いていった。(勝者が敗者に変わった瞬間だ)

かつて、そんなバトルが田舎の若者たちの間であった。

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