銀河ステーションに、わたしたちもきっと降りたつ/宮沢賢治・銀河鉄道の夜を読んで

銀河鉄道の夜
宮沢賢治(著)
宮沢賢治の壮大なファンタジー「銀河鉄道の夜」は、児童書というには、気が引けます。
人間にとって最大の関心ごとである「生と死」について書かれた本だからです。
でも、だからこそ小学生時分の学生さんには読んで欲しい本だと思います。
なぜなら、一生この本と付き合うことが出来るからです。
銀河鉄道の夜 (1981年) (フォア文庫)
2011-12-10 at 22.39.47
【写真/2011年12月10日 皆既月食】


夜の9時に空をみました。
すこし、暖かい風が吹いていました。
冬の間は、東にあったオリオン座が、今は西に沈もうとしています。
しばらく夜空をみていると、じぶんぜんたい宇宙に投げ出されたような気分になります。
そして、「銀河鉄道の夜」というのは、日本人の賢治だからこそ生み出せた話なのではないかという気持ちがふつふつとわいてきました。
わたしが持っている「銀河鉄道の夜」の版は、フォア文庫といって岩崎書店、金の星社、童心社、理論社の4社が協力出版という形で児童書を編纂したバージョンです。
1981年に出版されています。
現在、同社から手に入る本とは表紙が少し違います。
わたしは、この司修さんの版画の挿絵がとても宮沢賢治の本の内容に合っていると思います。
「グスコーブドリの伝記」、「雁の童子」、そして表題となっている「銀河鉄道の夜」の3篇が収められています。
「グスコーブドリの伝記」は、世のため人のためを実践した宮沢賢治そのもののような気がします。
最後の一節に、彼のすばらしい想像力と愛情を感じます。
この本の巻末の解説には、「銀河鉄道の夜」の後期型で賢治が消してしまった部分がそっくり載っています。
つまり、「銀河鉄道の夜」で賢治が最初に書いた部分です。
解説をつとめた堀尾青史さんが、あまりにも惜しいということで、解説において賢治が消してしまった部分を引用しているのです。
「生きる」ということについて書かれています。
わたしは、ときどきこの部分を読むことがあります。
もし、この本が手に入った方は解説まで読んでみて下さい。
「銀河鉄道の夜」は、誰からもうらやまれる少年カムパネルラに憧れにもにた感情をよせるさびしい少年ジョバンニが主人公です。
ジョバンニは、カムパネルラに話しかける少女に嫉妬したり、カムパネルラといつまでもこの銀河鉄道に乗っていたいと考えたり、かなり自分勝手な感情をあらわにします。
ジョバンニは、わたし自身でした。
自然は思いのままには、なりません。
嵐を制御することは、出来ないし、雨風を自由にすることも人間には出来ません。

厳しい自然とともに農耕生活を営んできた日本人の賢治だからこそ、この物語が描けたのだと思います。
わたしたちも幻想第四次の銀河鉄道の乗客なのです。
これは、ジョバンニとカムパネルラの問題などではなく、わたしたち自身の問題なのです。

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