現実と心のあいだ

私の実家は長野県にあるのですが、今は茨城に住んでいます。
時々、昔住んでいた実家が夢の中に出てくることがあります。
ただし今現在の私の実家は私がもともと住んでいた家ではなく、私が家を出てから建てた新しい家なのです。
夢に実家が出てくるときは、きまって取り壊される前の古い家の方なのです。
新しい方の実家は一度も夢に出てきたことがありません。
天井が黒く、隙間が多く、猫が出入りしていた「まっくろくろすけ」でも出てきそうな家なのです。
以前、父にこのことを話したことがあり、その時、父は私に
 「やっぱり、あのときお前を呼べば良かったなぁ。」と言いました。
「あのとき」と言うのは、古い方の実家を取り壊すときの事です。
その頃、私は実家からかなり遠い四国の徳島に住んでいましたので、呼ばれることはなかったのです。
私は実家に住んでいることが正直いやになり、家を出たのですが、私の心の中にはまだその家は建っているのです。
それが証拠に私は昔の実家の間取りやちょっとした壁のきずや落書き、どこに何が置いてあったかなど目をつぶると鮮明に想いだす事ができます。
私はいまだ、古い私の実家に「さようなら」をしていないのかもしれません。
〓武田〓

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