本の感想: あたりまえなのにぐっとくる話

誰の人生も楽ではないし、物語なのだなぁ と感じる本です。
図書館で「百年文庫」というタイトルに惹かれ借りました。いい本です。
(028)岸 (百年文庫)
収録稿
中 勘助(著) 島守
寺田寅彦(著) 団栗(どんぐり)/まじょりか皿/浅草紙
永井荷風(著) 雨瀟瀟(あめしょうしょう)


印象に残った言葉
「忙しい世間は竹村君には用はない。」 寺田寅彦/まじょりか皿 より
中勘助の「島守」は日記風の文体と淡々とつづられる島での1人暮らしの寂寥感が身にしみる作品です。
人生はさみしいことが当たり前なのだ と言われたようです。
寺田寅彦の「団栗」が私はとりわけ好きです。
生前の妻の団栗を拾うふるまいが、あとから胸を打ちます。
同氏の作品の「まじょりか皿」は
日暮れて路遠し
といった言葉が自分自身への反省とともに頭を駆け巡ります。
永井荷風の「雨瀟瀟」(あめしょうしょう)は、教養のない私には理解できない部分も多々ありますが、きれいな文であることは確かです。
失われていく古い良い物とそれを食い止めることの出来ない「いらだち」を感じます。
時代に背を向ける訳ではないです。
自分がいいと思っているものが日々なくなっていくさみしさです。

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