本の感想:ITに殺される子どもたち

ITに殺される子どもたち蔓延するゲーム脳
森 明雄(著)

ITに殺される子どもたち 蔓延するゲーム脳

ゲームやコンピュータに深く関わることで、人間らしさや感情が失われる。結果、人間として「殺される」ことになるという意味の題名だろうか。

本書の冒頭では小学生が起こした殺人事件を取り上げて「ゲーム脳」との関係を説いているが、少々強引な感がある。もう少し、説明が欲しかった。

著者は「ゲーム脳」という言葉で現代社会のIT化に警鐘を鳴らす一人だ。
著者が定義した「ゲーム脳」は、テレビゲームをする事によって前頭前野の働きが落ち、脳波のβ波が低下する状態を指す。
α波は、リラックス時に出る脳波。β波は、脳が活性化している状態に出る脳波で、例えば精神活動をしていたり、計算をしていたり、考えたりするときに多く出る。ゲーム脳になるとβ波がほとんど出ない状態になってしまい、ゲームはしているが脳がほとんど活動していないのだそうだ。そして「ゲーム脳」になってしまうと考えることをしなくなったり、記憶力の低下を招く。例えば、本を読んでも情景が想像できない。話の流れを記憶できない。結果として、本を楽しむことが出来なくなってしまうのだそうだ。

「ゲーム脳」を発見した過程に恐くなる。著者は、痴呆症の人の脳波を計測していたときにコンピュータに長時間向かっている人たちの脳波が酷似していることに気づくのだ。日常生活が困難になっている人とコンピュータに長時間むかっている人の脳波が同じだとするとわたしたちの多くは先行きが暗い。

本書の結論は普通に生活していれば誰でも感じることを書いているにすぎない。
こう言ってしまうと著者には失礼だが、大学で研究などしていなくてもコンピュータばかり使っていると心身に悪影響を及ぼすことぐらい分かる。もっとコンピュータをいじるより自然に親しみ戸外でスポーツに親しんだ方がいいに決まっている。ただ、どういう形であれ「これが悪い」と分かった時点で社会に対して警鐘を鳴らしていることは評価されるべきだと思う。
なぜなら、わたし自身、レストランで食事がくる間、携帯ゲーム機で遊んでいる子どもたちを見て「これでいいのだろうか」と思う一人だからだ。

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