本の感想:銀河鉄道の彼方に

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銀河鉄道の彼方に

銀河鉄道の彼方に
高橋源一郎(著)

銀河鉄道の夜を彷彿とさせるタイトルで、4cm程あるかなり分厚い本だ。
へんな話の寄せ集め、と言ってしまえばそれまでだ。それくらい<へんな世界>がこの本には登場する。

この本に登場するいくつもの世界と今わたしたちが住む現実世界との差はあるのだろうか。
冒頭は、わたしがこの本のタイトルから期待した宮沢賢治の<銀河鉄道の夜>そのままである。

「ではみなさんは、そういうふうに川だと云(い)われたり...」と始まるのだ。

ジョバンニやカムパネルラこそ登場しない(いや、後々二人は登場するのだが)が、銀河鉄道に乗って宇宙を旅するシーンが途中途中に挿入される。
その銀河鉄道の夜とともに、ばらばらと登場するのは、へんな世界の人たちの話だ。
冒頭は、「選ばれた一人の男が、宇宙船に乗って猫と一緒に旅をする話」
宇宙船には、地球上のありとあらゆる物資があり生活には困らない。ただ男はその旅の目的を知らされてはいない。宇宙船にのって<無限の彼方へ>旅をすすめるうちに、猫は死んでしまう。男は事前に日付を書かない日記をつけることを勧められている。男の日記はしだいに言葉というものを失っていく。男は自分一人しかいない宇宙船の中で言葉のもつ意味が分からなくなってくるのだ。

他に「今あったことをすぐに忘れてしまう世界の人たちの話」や「本を書くことが、生きることになっている民族の話」、「身体に触れるだけで、その人の筋肉や感覚をあやつることができる人の話」などなどへんな世界の話が登場する。
記憶とは。関係性とは。言葉とは。
わたしたちは、冒頭の宇宙船の男のように旅をしているようで旅をさせられている存在なのか。
一つ一つの世界に触れて、心に浮かんでくるのは、今わたしたちが住む<ここ>は生きるに値する場所なのかという根源的な<問い>だ。
わたしは、どちらかというと、この本に登場する<へんな世界>より、<ここ>の方がいいと思う。

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