一つの長い物語ではなく、10篇の怖い話をサッカレーという人物が兄妹に語るという手法をとっている。
文章のテンポが良く読みやすい。
サッカレーの語る話はビジュアル的(猟奇的なビジュアルが多いが…)で頭の中で想像しやすい。
表紙に描かれた兄妹のイラストが怖い。(タイトル名のフォントも!)
この兄妹の父親は落ちぶれた宿屋を営んでいる。
ある嵐の夜、兄妹二人は重い病にかかり寝込んでしまう。
「帰ってくるまで家には誰も入れるな」という言葉を残し、父親は医者を呼びに出て行く。
二人が目を覚ました時、なぜか病は消えている。
そこへ、びしょ濡れの若い船乗りサッカレーが訪ねてくる。
嵐の夜に船が到着するはずはない。
びしょぬれで登場するサッカレーは最初から幽霊じみている。ところが、怖い物好きの兄妹は父親の言いつけを破りサッカレーを家に招き入れてしまう。
怖いけど見てみたい、聞いてみたいというのが人間の本心である。
二人の兄弟もまさに怖い物好き。サッカレーが語る「怖い話」にどんどん引き込まれていく。
サッカレーが一つまた一つと怖い話を披露していく。
しかし、父親は一向に帰ってこない。
サッカレーが時々二人のことを知っているようなそぶりを見せるのはなぜか?
なぜ父親は帰ってこないのか?
サッカレーの怖い話と相まって二人の不安は大きくなっていく。
最後に明かされる真実は決して児童書向きとは言い難い。
それでも小さい頃に「怖がる」ことは大切だ。
お化けや幽霊などの怖い話は、人間の成長にとって必要なものだと思う。
「怖い」という感情が、人生の想像力の一旦を担うことになる気がするからだ。
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