本の感想:猫鳴り/沼田まほかる

猫鳴り
沼田まほかる(著)

猫鳴り (双葉文庫)

「折り合いなんて、たぶん一生つかない」という言葉が印象に残った。

沼田まほかるの第3作目。
本作で「猫鳴り」という言葉は、猫がゴロゴロと喉を鳴らすときの様子を表すのに使われている。
全3部構成となっていて、全編を通してとら猫の「モン」が登場する。
構成が秀逸である。
第1部から第3部は、時系列にもなっていて、年配の夫婦が登場する第1部と第3部。そして不登校の少年とその父親が登場する第2部に「モン」が絡んでくる。
主人公は、果たして猫の「モン」なのだろうか。それとも各部に登場する人物たちそれぞれが主人公なのか。いや、そもそも主人公などこの物語にはないのか。読み終わったあと、不思議な気持ちになることは確かだ。
沼田まほかるは、女性作家だが、男性でなければ分からないような心理描写が時として登場する。第2部の不登校の少年が「モン」や幼児に対していだく気持ちなどは、男の自分が見透かされているようで恐くなる。

「生まれて死ぬまで」は、万人共通の事柄だ。物心つけば誰だって知っている。しかし、それを受け入れることが人間にはむつかしいことなのだ。
とら猫の「モン」がそれを教えてくれている。

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