本の感想:世界一のランナー

世界一のランナー (児童図書館・文学の部屋)
世界一のランナー
エリザベス・レアード(著)

「毎日、学校に走って行き、走って帰る少年で終わりたくない。」
主人公の少年ソロモンは、エチオピア生まれの11才。走る事が好き。夢は、エチオピア代表として世界一のランナーになることだ。
もちろん、世界一のランナーになる、などという夢はアッバ(父)にはとても言える状況ではない。家で飼っているロバや牛の世話、農場の手伝いを考えると。

物語は突然動き出す。
ある日突然、ソロモンの祖父デミッシエが、キダメ(ソロモンの故郷)からエチオピアの首都アディスアベバに行く、と言い出すのだ。
首都までは35kmくらい。
車やバスで行けばなんということもない距離だが、人の足で行くとなると全く違う。

本を読む、という行為は、いつもとは違う視点をわたしたちに提供してくれる。
自分が訪れたことのない国での生き方。自分の生活圏とは違う状況考え方等々。
わたしが、この物語で提供してもらった視点の一つは、「自分の足を使って移動する」という基本的な事柄だった。
普段車を利用しているわたしからすると、35kmなんて大した距離ではない。信号待ちが気にかかるくらいで、大して体力の消耗もない。
翻って、ソロモンと祖父デミッシエは、歩いて35kmの道のりを行くのだ。当たり前の状況として。

わたしは以前、フルマラソンに出場して気づいた事がある。
1kmという道のりは、車で通り過ぎるとあっという間だが、走ると大変な距離なのだ。
歩いたり、走ったり自分の体を使って移動してみると、文明の利器の凄さと、人の力の無力さに改めて気づかされる。

ソロモンは学校に通っている。
ソロモンの通学のエピソードとして、ほぼ立ち止まらずに走って通学している、と本書に書いてある。その道のり片道8km。毎日マラソンの練習しているようなものだ。
アフリカ出身のマラソンランナーで有名選手が多いのは、生い立ちにもあるのだろう。本書に登場するエチオピアしかり、ケニアなども有名だ。

祖父が、なぜキダメからアディスアベバに行くと言い出したのか、それは物語のキーとなる事柄なので本書を読んでいただくことにする。
アディスアベバからキダメに向かう帰り道、あることがきっかけでソロモンは走って帰ることになる。35kmの道のりを、休まずに、だ。
走っているうちに、ソロモンには競争相手が出現することになる。読者はきっと競争相手の状況に、ソロモンと一緒に走っている気持ちになるだろう。

祖父デミッシエが伝えたかった真実が明らかになる時、物語はそっと未来に向けて幕を閉じる。
人は何の為に走るのか?
誰かの為に、真剣に取り組む姿を「世界一のランナー」だとするならば、世の中にいる無数の「世界一のランナー」とわたしたちは対面できるかもしれない。

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