本の感想:もものかんづめ/さくらももこ著

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面白かった本(その他)

できれば本書は電車の中で読まない方がいい。
『もものかんづめ』には17のエッセーが詰まっているが、わたしはその中のいくつかの回を読んでいる最中、声を出して笑い転げてしまった。さくらももこの書く文章はビジュアル化しやすいのか、その光景が目に飛び込んできてしまうのだ。とりわけ家族との話を扱った「メルヘン翁」、「結婚することになった」などは傑作だ。

本書に書いてあるのは、たぶん生きていれば誰でも体験するようなことばかりだと思う。いくつかの話は、わたし自身も、ああこんな事あったなあ、と感じながら読んでいた。でもさくらももこが書くと日常のありふれた体験が、とたんにコメディー漫画みたいになっていくのだ。いつもながら著者の視点には感心させられる。笑いの種類にもいろいろあるが、さくらももこの笑いは自分自身(さくらももこ自身という意味)以外の人は傷つけない笑いと言える。安心して笑えるのだ。これは現代社会ではかなり貴重な笑いとは言えまいか。

ちびまる子ちゃんでおなじみの著者さくらももこが初めて書いたエッセー集が『もものかんづめ』だ。初版はすでに30年近く前となる1991年。ちびまる子ちゃんは、時々腹を抱えて笑ってしまう回があるが、それは本書でも健在。挿絵も本人が描いているだけあって違和感なく話に入り込める。

読み終えたあと、さくらももこが2018年に世を去ったことを思い出し、ああもういないんだと少し寂しくなった。

わたしは以前からさくらももこの描く「笑い」が大好きだったが、その本質を考えたことが無かった。
今回はあらためて考えて一つ発見した。ちびまる子ちゃんなどでは主人公のまる子の自虐ネタで笑いをとることが多い。読者は安心して笑える。しかしそこにカラクリがあって、まる子に対して読者はああこんなことあったあった、こんなこと子供の頃やったなあ、などと共感しているのだ。要するにまる子は読者自身なのだ
自分のことだと人に対して言うのが恥ずかしいことの数々をさくらももこが読者に代わって自虐ネタで公開してくれているのだ
だから読んだ人は共感しながら笑い転げる……ある種の郷愁を伴って。

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