『罪と罰』を読まない
岸本佐知子・三浦しをん・吉田篤弘・吉田浩美(共著)
つい最近読んだばかりなのに、また「罪と罰」が読みたくなってしまった。
ドストエフスキーの「罪と罰」を読んだことがある人が、もっと「罪と罰」を楽しみたいなら読んで損はない。
本書は、「罪と罰」を読んだことのない翻訳家・小説家の4人が「罪と罰」に対してあれやこれや意見を交わした(座談会をした)本である。
本書の座談会に登場するのは、これまで「罪と罰」を一度も読んだことがないプロの面々4人。
プロの翻訳家や小説家の人でも、名作と呼ばれる「罪と罰」をこれまで読んだことがなかったという事実に少しほっとしたような親近感をおぼえる。
構成としては、「罪と罰」を読む前の座談会と読んだ後の座談会の2部構成だ。
途中にはさまれている、三浦しをんの「罪と罰」登場人物紹介と「罪と罰」あらすじが素晴らしく面白く簡潔でよい。(特に三浦しをんの書いたあらすじは、10ページしかないのに、このブログでも紹介した『90分で読む! 超訳「罪と罰」』なんかよりずっと超訳になっている)
興味深く読めるのは、後半の「罪と罰」を読んだ後の座談会の方である。
「登場人物に変な人しかいない、普通の人は2人くらい」「面と向かって何も言わないシーンに1分間が多い」「主人公は中二病」「ソーニャは最後教祖みたいになってる」……読んでいる最中は自分でもつっこんで読んでいた箇所だが、すっかり忘れてしまっている箇所はあるものだ。座談会の面々があらためて指摘してくれている。有難い。
一番好きなキャラは、主人公の妹ドーニャをつけ狙うスヴィドリガイロフと、4人全員が一致しているのは興味深い。(わたしも一番好きなキャラだ)
読む前の座談会部分は正直なところ、作家仲間連中がわいわいしているだけで読む価値はあまりない。(失礼!)しかし、読んだ後の座談会と最後を締めくくる三浦しをんの「読むのはじまり」は一見の価値がある。
(本は)読む前から”読む”は始まっている
「読むのはじまり」三浦しをん より
極めて名言だ。
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