『いつかの彼女』/長崎瞬哉
幼馴染みの女の子。少し気になる存在だった。
2年前のあの日、学校からの帰り道。
彼女は笑顔で(僕にとってはとびきりの笑顔で!)「またね」と言った。
翌日彼女は学校に来なかった。翌々日も。高校2年生女子の失踪事件は当時大きなニュース、になるはずだった。
不思議なことに、誰も彼女が世界から姿を消してしまったことに気づかなかったのだ。
クラスメイトも先生も、彼女を知っているはずの親でさえも。
担任の森先生は、彼女の名前を当然のように抜かして次の子を呼んだ。
クラスメイトに、彼女はどうしたのか尋ねた。「誰それ?何言ってんの?」と言われた。
3日後、彼女の両親に会いに行った。「そんな子うちにはいません」と言われた。
学校行事が写ったアルバムを開いた。彼女を探した...いるはずの場所に別の女の子が写っていた。
突然、世界が彼女を抹殺してしまったかのようだ。
2年たった今、僕は信じている。彼女は存在していたと。
なぜならね、ほらこれ。
つい最近彼女からメールが来たんだよ。近況報告って写真も送ってくれた。
スマホの壁紙にしたよ。彼女がこっちを向いて微笑んでいる写真。
でもなんで制服姿なんだろ。
あれ?君には見えない?
ほらこの椅子に腰かけて..白い猫しかいない?うそ。冗談やめてよ。
(おわり)
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