わたしは本を読む時、その著者の経歴も出来るだけくわしく読むようにしている。
面白いなあ、と思う本がある。
そうした本に出会う時、必ずといっていい程その本の著者の経歴も面白い。
先日読んだ「タネが危ない」の著者である野口勲氏は、かつて故手塚治虫のマネージャーしていたという。
現在は「固定種」という昔ながらの種を扱う実家の種屋を経営している。
野口氏は著書「タネが危ない」の中で手塚漫画に育てられたと言っている。
手塚治虫が『火の鳥』をライフワークとしていたように、野口氏も生命の起源である「種」を扱う仕事に使命感を感じ取り組んでいるのだそうだ。
漫画と種屋。まったく接点が無いといっていい程違う気がする。
50代でデビューしたホラー作家の沼田まほかるさんも主婦、離婚、お寺の住職、建設会社経営、小説家、という経歴を持つ。
若い人では描く事が出来ないであろう人間の深層心理にせまる文章が心を打つ。
小説家に限らず、人の経歴というものは外見からは想像がつかないものだ。
ただし、少しつっこんだ話をすれば経歴は顔を出す。
経歴とは、その人の歩いてきた道である。
色々とあって、今ここに在る。
その人の経歴が、その人の人生を作っている。
なぜわたしはここにいるんだろう、と思うとき、わたし自身だけではなく多くの人との関わりでわたしはここまでやって来たのだという事実を知る。
今の自分には、多くの人たちが背後に関わっているのだ。人はそれをあたかも自らの人生であるかのように振る舞う。
世の中では、経歴をごまかして利益を上げたりする人がる。
経歴をごまかしても、「経歴をごまかした」という経歴がそこに加わるだけだ。
これから自分はどういった経歴を持つ事になるのか。
生きているあいだ興味は尽きない。
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