300字小説「飼い猫」

長崎瞬哉(詩人)

雨の日は憂鬱だ。

あの日…子供の頃、梨花が一人で留守番していた日。
両親は共通の友人の結婚式で朝早くに出かけていた。
一緒に住んでいた祖母も日課の散歩に出ていった。

ほどなくして雨が降り出した。
雨の中、郵便屋さんが来た。
郵便受けを見に梨花が玄関を開けると、出かけたはずの両親と祖母が立っていた。

三人とも服が濡れている。
なぜか梨花を見てニコニコと手招きをしている。…っと、梨花の足に冷たい感触が走った。

足元に飼い猫のクロがいた。
クロもびしょ濡れだった。

はっとして、玄関を見ると両親と祖母は消えていた。

あの日、三人は事故で死んだ。

今日は雨。
玄関先には夫と二人の子供がびしょ濡れで立っている。
でもクロはもういない。

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