300字小説「最後の授業」

長崎瞬哉(詩人)
最後の授業

「あれは、何だったんでしょうねえ…」

国語の時間、F先生はとつとつと話し出した。

それは先生が子供の頃の話だった。
母親と手をつないで踏切の前に立っている。電車が通り過ぎるのを待っている。

そう思っていた。

しかし、踏切が上がっても母親は動かない。

次の電車が来て、また通り過ぎた。
母親は踏切の前で、強くF先生の手を握り締めたまま微動だにしない。

3つ目の電車が通り過ぎた。

踏切が上がり、母親が歩きだす。
F先生は少しほっとしたのを憶えている。

「あれは本当にあった事だったんだろうか。今でも時々思い出します…では、今日の授業を終わります」

当時、中学3年生だった私は、F先生が最後の授業でしたこの話を時々ふと思い出す。

300字小説の原稿用紙として使えるサイト
川又千秋の三百字小説(ワンショット・ノベル)という本を読んで自分も300字小説を書いてみたいと思い作ってみたサイト。

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