続・夢十夜/第七夜『家』

アイキャッチ未登録画像 長崎瞬哉(詩人)

こんな夢を見た。
目の前に、幼い頃に住んでいた家が見える。
築100年をこえる日本家屋の古い家。もう取り壊されて無いはずなのに…

懐かしくなって、私は玄関を開けた。
中はしーんと静まり返っている。人の気配はない。
つきあたりが勝手口、右手がお茶の間になっている。
私はお茶の間の引き戸を開け中に入った。縁側へつづく廊下の障子が、あちらこちら破れていた。あたりの空気は重く、もう何十年もそこにあるようだった。
この家には誰も住んでいないのだな、と思った。辺りが急に暗くなったような気がした。

明るい方へと思って縁側に出た。
奥座敷の前を通り過ぎたとき、何か硬い物を踏んだ。足元には、ひな人形の頭が落ちていた。
よく見ると他にもひな人形の頭だけが落ちていた。私は(もう他界した父母を含め)「家族は今どうしているのだろうか?」と思った。

さっき勝手口の前に猫の餌が置いてあったことを思い出す。
猫がもう戻って来るかもしれぬ。私は引き返した。
猫は、やはりそこにいた。三毛猫だった。
三毛猫はこちらにお尻を向け、むしゃむしゃと自分の身体ほどもある大きな丸いものを食べていた。

私の気配に気づいたのか、猫が食べるのをやめた。瞬間…ゴトリ
猫の食べていたものが向きを変えた。母親の頭だった。
その時、縁側で見たひな人形は、私の弟と妹だったんだな、と理解した。
猫がじっと私を見ている。

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