「石油」の終わり エネルギー大転換
松尾博文(著)
本書で何度も引用される鮮烈な言葉がある。
「石器時代は石がなくなったから終わったのではない。(鉄や青銅器など)石に代わる新しい技術が生まれたから終わった。石油も同じだ」
『石油の終わり』より サウジアラビア元石油相 アハメド・ザキ・ヤマニ氏の言葉
現在、人類はエネルギーの大転換点にいるのだと認識させられる内容。
エネルギーは、国と国の力関係を変える大問題であるということ。
本書で一番興味深かったのは、このまま太陽光や風力発電など再生可能エネルギーが普及し、EV車が100%になったとしても、世界的には2040年頃まで石油は右肩上がりの成長を続けるという記述だ。
主要国の石油消費が下がっても、いままで石油を使ってこなかった国の石油消費が上がるためだ。
ある日突然、石油がなくなるわけではない。
本書は、2018年に出版された本であるが情報はいささかも古びていない。
著者は日経新聞の記者でもある松尾博文氏。中東取材で得た情報を駆使して語る様は説得力がある。
この本を読んですっきり理解できたこと
- 昨今、なぜEV(電気自動車)流行りなのか?
- 気温上昇1.5度目標の裏で動いていること
- シェール革命(米国)とISの関連性
- アメリカが中東から軍を撤退させるのはなぜか?
- 中国の一帯一路構想の役割
- なぜ日本では原発が推進(福島第一原発事後以前)されていたのか?
- 日本で太陽光発電が1番のエネルギー供給とならない理由
これらが全て本書の視点(エネルギーを求める国と国の力学)からみると、ひも解くように理解できることが分かった。(結論をいうと全て「石油」がからんでくるのだ)
エネルギー問題を理解すれば、現在の不安定な世界情勢を理解できるといっても過言ではない。
そのための教科書として本書は最適である。
福島第一原発の事故があった時、わたしも脱原発を叫んでいた口だ。
しかし、本書を読んで日本では地勢的・気候的にみても再生可能エネルギーをベースロード電源(安定的に供給できる電源)には位置づけできないと知った。
石油資源がほぼない国日本では、原発がベースロード電源の役割を担っていたのだ。
国と国の力関係まで想像せず、感情にまかせて脱原発を叫んでいたわたしは、SNSでちょっと煽られた情報に軽く乗ってしまうような愚か者だった。
きちんとした情報をつかんで様々な意見を身につけないといけないと感じた。
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