空き家になった実家を整理していたときに持ってきた本の中に「高齢化社会」があった。
たぶん父が買った本だ。(父が読んだかは分からない)
以前わたしは少しだけこの本を読んだ。自分で貼った付箋があった。
付箋の部分はこんなことが書いてあった。
長寿国とは「工業化社がもたらす物力によって①生存環境を改善し②栄養を十分に供給でき③化学療法によって感染性疾患を制圧する―ことが可能となった結果“衰弱してもしねない老人”が人口の相当部分を占めるようになった国」である。
講談社現代新書『高齢化社会』より
ちなみに、この本の内容は今後日本にやってくる高齢化社会への警鐘を鳴らした本だ。
ん?この本いつ書かれたんだ?
と思って出版時期を見ると昭和56年とある。(しかも当時の価格は390円だ)
昭和56年は西暦でいうと1981年。この年に生まれた人は43歳になっている計算だ。
ようするに今から43年前に書かれた本の中で高齢化社会への警鐘が鳴らされているのだ。
“衰弱してもしねない老人”
に誰かの顔を重ねてしまった。たぶん今後自分自身も入るだろう。
著者の吉田寿三郎氏は、北欧の長寿国といわれるスウェーデンに足を運び、すでに当時から日本にこれからやってくる高齢化社会の不安を肌で感じていたようだ。
出生率を上げる必要性にようやく最近耳をかたむけてくれるようになった
と冒頭に書いてあった。ちなみに著者はこの本の出版の20年前(1961年ころ)から日本の出生率を上げる必要性を説いていたようだ。
今だれも耳をかたむけてくれない言葉の中に未来の真実はあるのかもしれない。
スウェーデンはよく福祉国家としてニュースで紹介される。
わたしも福祉が行き届いて良い国なのだと漠然としたイメージを抱いていた。
しかし、1959年にスウェーデンを訪れた著者の吉田氏の考えは違ったようだ。
わたしの期待と憧れはまったく裏切られたといってよい。スウェーデンで私が見たのは健康で幸福な余生を送る老人たちでなく、“弱っても死ねない”老人たちの群れだった。たしかに国をあげて手厚い老人対策は講じられていたが、ほとんどの老人たちは決して幸福な顔付をしていなかった。
講談社現代新書『高齢化社会』より
日本では、これまでスウェーデンに対してこのような報道がどれ位されてきたのだろうか?
日本より優れた点ばかりあげつらった報道にかたよっていたように思う。(国をあげて隠していたとは考えたくないが)
実家に眠っている本には貴重な本が隠れている。(のかもしれない)
著者は本書の中で「最低3人は産んでくれることを望みたい」と言っている。
そういえば、わたしは3人兄妹だ。
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