300字小説「隣人」

長崎瞬哉(詩人)

昨日、隣りの部屋に越してきた男に美砂は見覚えがあった。1年前に美砂がいたアパートの隣人だった男とどこか似ている。引っ越しの荷物を運送屋さんと一緒に運ぶ男を、ちらっと見ただけなので他人のそら似かもしれない。でも気になる。というのも美砂が1年前に引っ越した理由は、隣人の男の視線が気になっていたからだ。通路やエレベーターで会ったときの絡むような視線。無言で美砂の心をのぞき込むような視線。隣りに住んでいるとあれば気持ち悪かった。ピンポーン。美砂の部屋のカメラ付きドアホンが鳴った。出るか迷った。画面に越してきた男が映っていた。無言でじっとこっちを見ている。絡むような視線。息を止めた。男の口角が上がった。

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