ヒトはなぜ「がん」になるのか ~進化が生んだ怪物~
キャット・アーニー(著)
矢野真千子(訳)
身近な人が「がん」である人、あるいは自身が「がん」である人、これから「がん」になるかもしれない人、みんなが読んでおいて損はない知識を提供してくれる本。
がんは人間だけがなる現代病ではなく、
本書より
生物の基本システムに最初から組み込まれたバグであるという話をしたい。
この冒頭の著者の言葉は、わたしには目からうろこだった。
わたしが「がん」についてはじめてまともに考えたのは、父の死があってからだ。
わたしの父は胃がんで亡くなった。
当時のわたしは、父のがんが本人がタバコを吸って酒ばかり飲んでいたせいだと決めつけていた。
要するに、父ががんになった原因は、「本人だけのせい」と考えていた。
もちろんタバコや酒が、がんになる原因を増やすことは現代では当たり前の認識だが、本書を読んで少し認識が変わった。
その当時、この本に出合っていれば身内の「がん」との向き合い方や自分自身の心の持ち方も良い意味で変わっていたのではないかと思う。
がんについてのみ書かれた本ではない。
遺伝子が生物の進化にどう影響しているか?を「がん遺伝子」や「がん治療」とからめて多角的に論じた本だ。
自分として本書の中で参考になった部分
生物学のすべてが進化の視点なしに意味をなさないのと同じく、がんのすべても進化の視点なしには意味をなさない。
本書より
「がん」も「がんでない細胞」も人間体の中で日々進化するもの、という視点をもって医者も患者も生きていく方が自然だよ、と教えられた気がした。
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