デルトラ・クエスト III〈1〉竜の巣
エミリー・ロッダ(著)
デルトラ・クエストⅠ、Ⅱにつづく、第3章となるデルトラ・クエストⅢは、この「竜の巣」をはじめとする全4巻です。
政治を行う「官」とそれに従い意見する「民」のはざまで揺れ動く主人公のリーフ。
この物語のいい所は、主人公「リーフ」を通じて、国を統治する側の生活と国を作る末端の生活が描かれていることだと思います。
印象に残った言葉
「一難去ってまた一難。おれたちは、つぎの災難をさがして歩いているだけなんじゃないか」
「カプリコンが、いまを生きるよりも過去をなげくことをえらぶなら、それはやつらの勝手さ。他人がとやかく言っても、どうにもならない」
デルトラ・クエストⅠで、影の大王からデルトラのベルトを取り戻し、Ⅱで影の王国に連れ出された国民を救出したリーフたちは、最後の戦いに挑みます。
「大地がやせほそり、作物が実らない」原因は、影の大王がしくんだ「四人の歌姫」計画です。
全4巻の各巻が、4人の歌姫に関係しています。
剣と魔法の冒険につきものの竜(ドラゴン)がこの章では、たくさん登場してきます。
竜は、「人知の及ばぬ強いもの」として描かれています。
昔、デルトラ王国が栄えていたのは竜がいたおかげで、竜がいるから影の大王も手出しができなかった。
しかし竜は、民からすれば、コントロールできない存在で、そのおかげで、家畜や自分たちが危害を加えられることもあった。
存在が善でもあり、悪でもある、ということでしょうか。
存在が善でもあり、悪でもある「竜」の存在は、現代に置き換えると何になるのでしょう。
少し考えるところです。
Ⅰから続く、リーフ、ジャスミン、バルダの3人の冒険は、物語がシンプルな分、安心して読み進む事ができます。
そして同時に、「国」というものや「民」というもの存在について考えさせられる物語でもあります。
こんなくだりがあります。
あるとき、国王リーフたちは、国民に知られないよう、秘密裏に計画と冒険を続けます。
理由は、王国の未来のため。
もちろん王国とは、国民が豊かに生活できる王国を指しています。
どこかの国に似ていないでしょうか。
大人が読んでも十分面白い話です。
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