本の感想:チョコレート・アンダーグラウンド

面白かった本(小説)

チョコレート・アンダーグラウンド
アレックス・シアラー(著)
金原瑞人(訳)

「本日五時以降チョコレートを禁止する」

行き過ぎた(たかがチョコレートと笑うなかれ)政策に終止符を打とうとスマッジャー少年とハントリー少年が立ち上がる。世界にチョコレートを取り戻すために。

すでにページをめくる前から、この本を手に取った人はチョコレート好きなのではないかと思われる。(わたしも含めて)
読み終えた後に気づいたが、「自由を愛す!」という意味の文字が表紙に小さく英語で書かれていた。

we love freedom

「自由」と「チョコレート」。
この2つの言葉がどう繋がるのだろうか。物語を読めば、それが冒頭から始まっていることに気づく。
健全健康党の男が街にポスターを貼つけている。それを見ている少年二人。スマッジャーとハントリーがこの物語の主人公だ。
健全健康党とは、選挙で選ばれた政党だ。この政党の方針は、党名の通り、国民が「健全」で、「健康」になることだ。
一見聞こえはいい。しかし男が貼ったポスターには、「本日五時以降チョコレートを禁止する」と書かれている。もしあなたなら、この政党に投票したことを後悔するだろうか。(たぶん、するだろう。わたしも後悔する)

健全健康党は、政権を取った後、考え方がどんどんエスカレートしてきたようだ。

「あなたが選挙で誰にも投票しなかったから、連中が勝ったのよ」とスマッジャーの母になじられるスマッジャーの父は他人ごとであろうか。
この場面、『悪が栄えるためには、善人がにもしないでいてくれればそれだけでいい』というイギリスの政治家エドマンド・バーグの言葉が引用される。
「選挙なんか行っても何にも変わらないよね」と言った大人にわたしはこれまで何度も出会ったことがある。

ついにはチョコレートだけでなく、砂糖も禁止しようとする健全健康党。
「チョコレート」という言葉を「自由」に置き換えてみると、という訳者の言葉にハッとする。
「チョコレート・アンダーグラウンド」は、どこかの星のどこかの国の物語ではない。わたしたちの身の回りでおきている事実なのかもしれない。

本というものは、その装丁も含めて本だと思う。
そうした意味でこの「チョコレート・アンダーグランド」は、完成された本である。
コートの襟を立てて帽子をかぶったちょっとキザな少年が、チョコレートをくわえている表紙。本全体がチョコレート味を帯びた茶色。ページを開くとなんと本の文字まで茶色、いやチョコレート色なのだ。
「チョコレート・アンダーグラウンド」を読んでいる最中、わたしのチョコレート消費量が上がったのは言うまでもない。
ところで、チョコレートや甘い物が無い世界が「健全」で「健康」とは思えないですよね。
楽しみも「健全」で「健康」なことだから。

それでは、みなさん。

りんごさくさく気分をどうぞ!

「チョコレート・アンダーグラウンド」より

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