夕方5時40分の誰もいない家

怖い体験をした。
仕事から帰った家の中での出来事だ。

わたしは家に帰る時間が、家族の中で最も早い。仕事を夕方5時に終えて車で家に着くのは夕方の5時40分くらいだ。
6月に入りめっきり日が長くなった。家に帰ってもまだ外は明るい。
自然を見るのは好きなので、庭の木や草花を見ながら外の椅子に腰掛けてボーっとしていることも多い。家族がまだ帰宅していなこの時間帯はわたしにとって、一人になれる貴重な時間でもあるなと、最近思う。

今日も帰宅して、着替えたあと、外の椅子に座って庭や空をボーっと眺めた。
部屋に戻って、読みかけの本を読み始めた。本を読み進めて、しばらくしたときにそれは起きた。
耳元で「ふぅー」っと息の音が聞こえたのだ。
音が聞こえてから10秒くらいたっただろうか。わたしは急に怖くなってきた。
なぜか窓の外を見た。外とのつながりが欲しかったからかもしれない。外はまだ明るい。先ほどわたしが座っていた椅子が見える。
庭の木や草木もそのままだ。家の先の道路は人っ子一人いない。車の走る音も聞こえない。風がない為か、外の景色が止まって見えた。
家の中に先ほどわたしの耳元で息をしたモノがいるのか。
しん、と静まり返った家の中はホラー映画で見た光景のようだ。わたしの家は古い家だ。ふすまの奥、影の先を想像してしまう。自分が横浜の中華街で買った目と口もとが笑っているお面が怖い。
少し家の中を歩き回った。
誰もいない。
外に出てみた。
わたし以外、誰もいなかった。

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