『はだしのゲン』の作者である漫画家の中沢啓治さんが亡くなったと新聞で読んだ。
昭和は遠くなったのだろうか。
著者の中沢さんが6歳のころ広島での被爆体験をもとに描いた作品が『はだしのゲン』である。わたしは、小学校の図書室になぜ漫画本が置いてあるのかと疑問も持たずに本書に接していた。わたしは少しグロテスクな描写のある『はだしのゲン』は大好きだった。漫画として面白かったから。
主人公ゲンのたくましさは今までみたどの小学生よりもたくましく、大人をも超えていた。
大人になった今、『はだしのゲン』の有り難みは、漫画であるということよりも忘れてはならない記憶なのだと感じるようになった。
2012年(平成24年)12月26日の朝日新聞朝刊の記事にはこう書かれている。
これは先頃出版された『はだしのゲン わたしの遺書』のあとがきの言葉だそうだ。
「『はだしのゲン』は、わたしの遺書です。わたしが伝えたいことは、すべてあの中にこめました。『はだしのゲン』がこれからも読みつがれていって、何かを感じて欲しい。それだけが、わたしの願いです」
本書が読みつがれる限り、昭和は記憶から遠ざかることはないと思う。
「遺書」というと、遺族にあてたものの感が強いが、中沢さんのように自分の作品が遺書となる、そういう遺書もあるのかと思った。
思うに中沢さんの『はだしのゲン』は、日本という国に住むわたしたち一人一人に宛てた遺書だったのだ。
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