さけるチーズについて

そういう気持ち

わたしが中学生くらいのころ「さけるチーズ」というものが雪印から発売された。

親指くらいの太さのチーズを割いて食べるという仕掛けと、弾力のある食感にわたしは「さけるチーズ」のとりこになった。

社会人になって「さけるチーズ」は「ストリングチーズ」という種類のチーズだと知った。
そんな知識はどうでもいい。

わたしは一度でいいから「さけるチーズ」を割かないで食べてみたいと常々思っていた。
ただ社会人になって金銭的に余裕ができても「さけるチーズ」をそのまま食べるという勇気がなかった。

なぜか「さけるチーズ」を割かないで食べるのは反則のような気がしていた。

ある日わたしは、仕事で教えている生徒が登校していきなり「さけるチーズ」の袋をやぶってそのまま食べている光景を目にした。

校則違反の生徒を見るような目つきで、わたしは恐る恐るその生徒に聞いた。

わたし「それ何?」

生徒「さけるチーズです」

わたしは内心「知ってるけど…」と思ったが、冷静を装って更に聞いた。

わたし「チーズ好きなんだ」(われながらとんちんかんなセリフだったと思う)

生徒「もぐ…もぐ…今日の朝、食たべてこなかったんで」

生徒の手にしている歯形のついた「さけるチーズ」を見つつ、わたしはそれまでの自分の勇気のなさは何だったのかと思った。
そして、あるものがわたしの中で砕け散った。

あの日以来、わたしは「さけるチーズ」を割かずにそのまま食べることが出来るようになった。

でもいまだに「さけるチーズ」を袋から出してそのまま食べるのは少しだけ勇気がいる。

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