夏への扉
ロバート・A・ハインライン(著)
タイムトラベルもののSFとして有名な本。1956年にアメリカで刊行された。
タイトルの「夏への扉」の意味する所だが、これは主人公の愛猫であるピートが関係している。
冬、猫用の扉から、ピートが戸外をのぞく。白いもの(雪)があると別の扉から出ようとする。もし別の扉からも白いものが見えたら、また別の扉を開けて…
ピートは雪が嫌いなのだ。
最後には、ダニーに頼んで人間用の扉を開けさせる。
ピートはどこかに 雪が見えない扉 すなわち「夏への扉」があると信じている。
主人公ダニーは人類の生活を楽にしてくれるロボット制作に熱中する根っからの技術者。
友人のマイルズと「おそうじガール社」を起業する。
しかし、同僚であり恋人であったベルは、友人のマイルズと共謀し会社を乗っ取ってしまう。
恋人も職場も失ったダニー。さらには元恋人ベルの策略によって意図せずコールドスリープで30年後の未来へと旅立たされてしまう。
1970年から2000年にタイムスリップするという設定は、現代からしてもすでに過去の話となってしまうが、本書で描かれる2000年の未来は十分に魅力的で未来的だ。
元恋人と友人への復讐から始まる前半は、どろどろした愛憎劇になってしまっているが、未来で目覚めたダニーは、徐々に冷静さを取り戻し本来の目的を思い出す。
著者は、未来に行った主人公に、何度も「今の方がいい」と言わせている。
すなわち1970年より2000年の方がいいと言わせているのだ。
主人公は意図せずタイムトラベルで未来に行った。しかし、自分がいた時代より未来の方がいいと主人公は考えている。
ところが、主人公は自ら過去へのタイムトラベルを選択する。その意図は?
著者からのメッセージは、明白だ。
この世から自分がいなくなっても、大切な人の未来が明るい未来でありますように。
「夏への扉」はある。猫は教えてくれる。
わたしが読んだのは、小尾芙佐 訳の方だが、日本では福島正美 訳の「夏への扉」が有名。
読み比べてみるのも面白い。
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