本の感想:地球星人

面白かった本(小説)

地球星人
村田沙耶香(著)

読んでいて気分が悪くなってくる感じは著者の芥川賞を受賞作『コンビニ人間』以上。
ある意味、突き抜けた狂気が体験できる小説だ。

タイトルの「地球星人」とはすなわち社会で普通に生活しているわたしたち自身のことを差す。

主人公の奈月は、自分を地球に降り立った宇宙人であるポハピピンポボピア星人(けっこう言いにくい!)と考えている。主人公奈月に後半から同じ考えを持つ男2人が加わり物語は急展開していく。

一般的に考えると主人公奈月たちの「考え方」は、狂気だろう。
菜月たちは大人たちが生活する環境を「工場」と呼んでいる。「工場」では、オス(男性)とメス(女性)が巣を作ってそこで子供を生み育てる役割が与えらえており、オスとメスは工場の部品なのだ。菜月たちはいずれ自分たちもある一定の年齢になったら工場の部品になることを強いられると考えているのだ。

わたしは、「工場」の描写が出てきたとき、一瞬SF小説なのかと勘違いしてしまった。
あくまで「工場」は、主人公の頭の中での視点であり、その視点を軸に地球上でのわたしたちの営みをみてみようという試みなのだ。

地球星人たちから逃れるためにとった主人公たちの考え方や行動は、まさに地球人ばなれしている。『地球星人』を読んで、共感できるか意味不明と感じるかは、本書の言葉を借りれば読者がポハピピンポボピア星人よりの人間であるか、地球星人よりの人間であるかを表しているのだと思う。

著者の『コンビニ人間』を読んだ時にも感じたが、凄く気分が悪くなる小説なのにどうしても結末が気になり最後まで読んでしまう点は本書でも同じだ。(より一層強くなっているかも)
きっと、村田沙耶香の描く視点には、狂気の影に隠れて人間の真実というものが炙り出されてくるからかもしれない。世間一般には覆い隠されている「人間の真実」を知りたいという欲求が最後まで読んでしまう原因か。

読み終えた後、地球星人であることの可笑しさに気づくのはわたしだけだろうか。

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