本の感想:ドストエフスキー「罪と罰」

面白かった本(小説)

その先はどうなるのだ?という感情が、「罪と罰」を読んでいる間、続いた。

長編小説の場合、そういった感情はとても困る。
普通、長編小説を読んでいると「どこで一時休止しようか?」と考える切れのいい場所があるものだ。

「罪と罰」にはそれがない。

主人公は序盤に殺人を犯してしまう。
罪の意識にさいなまれ……とはならず、時には罪の意識にさいなまれ、時には俺はナポレオンのような人物となるのだ、と考えたりする。

登場人物と話している最中にも、主人公の心はころころと変化する。

途中、「息もつけない」というシーンに何度も遭遇した。
主人公からすれば(もちろん読者からみても)嫌な登場人物たちのセリフに圧倒される。
自分が主人公に乗り移ってしまい、目の前で息も出来ずに相手の話を聞いているような状態だ。

きっと心に響くものがセリフの中に散りばめられているからだ。

「罪と罰」は、いかようにも読める小説だ。
主人公が自ら犯した殺人から逃れるためにとる奇抜な行動や心の変化は、ミステリーや心理小説のようにもみえる。事実、読み始めはミステリーかな?と思って読んでいた。

ところが、友人のラズミーヒンや宿敵スヴィドリガイロフがとうとうと雄弁に思想を語るシーンをみれば、思想小説にも思える。

貧しい少女ソーニャと主人公の関係をみれば恋愛小説にもなってしまう。

昔から知っているのに読んだことがない有名な小説「罪と罰」をようやく読んだ。
著者がロシアの文豪ドストエフスキーだということももちろん知っている。

本の名前を知っているのと本を読んだことがあるのとでは、まるで違う。
いまだに読み継がれる小説が存在するということは、人の心は19世紀も21世紀の今も変わらないということなのだ。

わたしが読んだ本は、岩波文庫版「罪と罰」江川卓(訳)の上中下の3巻セット。

他にも新潮文庫版「罪と罰」工藤 精一郎(訳)の上下巻セット、角川文庫版「罪と罰」米川正夫(訳)の上下巻セット、などがある。

もう一度読んでみたい小説なので、岩波文庫版以外の訳も読んでみるつもりだ。

「罪と罰」は長編小説なので、原作を短くまとめた 90分で読む! 超訳「罪と罰」(知的生きかた文庫) などが出ているが、これは酷い。原作の雰囲気が消えているばかりか、登場人物も違う性格に描かれていたりするので、ダイジェスト版は読まない方が良い
「罪と罰」は訳者が誰であれ、原作を読むべきである。原作でないと伝わらない部分が「罪と罰」には沢山ある。そして、人生の中で何度も読んでみたくなる小説の一つだと思う。

コメント

タイトルとURLをコピーしました