Ⅲ章冒頭より引用
みなさんは悪魔というものがこの世に存在すると思いますか?
もしもこの世に悪魔がいるとしたら、その名前はきっとドラッグというにちがいないと、ぼくは思っています。
児童書であるが、大人も読んで正しい知識をつけたいと思う本だ。
ほんとうの「ドラッグ」
近藤恒夫(著)
著者の近藤恒夫は、30歳のときから9年間覚せい剤中毒者として生きてきた。
家族、そして病室で出会ったアル中の神父さんロイさんの力を借りて薬物依存から立ち直った。
本書は、薬物依存に陥っていない若者、薬物依存に陥ってしまった人やその家族・友人に対する真剣なメッセージだ。
薬物依存だった本人の体験がなまなましい。
薬物依存の10年間に頭の中にあったのはたった一つ「どうやって覚せい剤を手に入れるか」だけだったという告白が恐ろしい。
覚せい剤は「悪魔」だ、と著者は本書で何度も述べている。
罪の意識はある。明日からやめよう、明日から…と毎日思い続けている人生。
心が奪われるとはこのことをいうのだろう。
まさに悪魔のしわざだ。
著者はドラッグ中毒者の内面にもスポットを当てている。
それも何度も。
きっとそれが一番知って欲しかったことなのかもしれない。
「ある子どもが薬物に依存するのは、その子どもが意志薄弱だからでもなく、その子どもの魂が悪に染まったからでもありません。孤独、悲しみ、不安、恐れー多くの子どもたちはそれらから逃れるため、偶然出会った薬物に依存をするようになるのです」
すなわちわたしたちも同じだということ。
出会ったものがドラッグだっただけ。
人生のそこに至るまでの道のりが違っていたと考えると分かりやすいかもしれない。
わたしが一番ドラッグは悪魔だと感じられたエピソードは、著者が知り合いの薬物依存者から聞いた話だ。
覚せい剤を打ったあとにカップ麺を作ったら、幻覚が訪れて、カップ麺が大きな海にかわり釣りをしている。気づくとハワイにいて、突然口から火を噴く男が現れ飛行機で逃げパラシュートで脱出。
そして気づくとカップ麺にカビが生えていた。
カップ麺にお湯を入れた後、カビが生えるまで幻覚を見続けていたことになる。
大麻を使ったことのある日本人の割合は、1.4%。これには驚く。わたしはもっと少ないと思っていた。
イギリス、フランスで30%。アメリカ合衆国に至っては40%に跳ね上がる。
アメリカの今が日本の未来を表している部分は多くあるので、日本のこの先を憂う。
この本は薬物依存患者やその家族・友人が立ち直れるきっかけのために書かれている。
友人がドラッグを使っていることを知ったらどうするか?
「友情だけは捨てないでほしい」
シンプルだが、著者の10年間を無駄にしない答えがここにあると思う。
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