本の感想:あやし うらめし あなかなし・浅田次郎

面白かった本(小説)

あやし うらめし あなかなし
浅田 次郎(著)

ちょっと怖いなあ。
そう思いつつ、覗き込んだら誰かに背中を叩かれる。
浅田次郎の「あやし うらめし あなかなし」は、そんな読後感の短編7つで構成される。

「赤い絆」

伯母が寝つかない子供たちに枕元で怖い話を語り始める。
舞台となる広い奥座敷や障子のある古い日本家屋は、それだけでも怖い。

「虫篝」(むしかがり)

現世で自分とそっくりの人に会った家族や知人たち。
どこかで聞いたことのある話のようだが、最後のおちは「あなかなし」

骨の来歴

独身だと思って訪ねた高校時代の友人から聞かされる身の上話。
終盤が近づくにつれ、じわじわと押し迫って来る怖さがある。

昔の男

本書の中では一番明るく終わる話。
しかし、先の戦争の傷跡をからませてあって、不思議な話だが芯が通っている。

客人(まろうど)

読んでいる途中思い出したのは、「自分の子をおんぶして、話していたら、かつて殺した幼子の霊だった」という恐怖譚。ただし、配役は全く違う。恋愛に死がからむとやはり怖い。

遠別離

今があるのは、誰のおかげか?戦前と戦後が交錯して一つになる様は圧巻。

お狐様の話

小さい頃、わたしもよく祖母から聞かされた狐憑きの「あやし」話。
懐かしいと感じるのは、日本人だからか。

7つの短編は、どれも最後に恐怖が待っている。
恐いけど悲しい。悲しいけれどほっとする。
人間の感情は、全て紙一重なものなのかもしれない。

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