怖かったもの

実家の近くには名立神社(なたてじんじゃ)という古い神社がある。
今もお盆になると盆踊り大会が開かれるが、ふだんは子どもたちの遊び場だった。
少なくともわたしの小学校時代は野球をしたり、かくれんぼをしたり缶蹴りしたりと遊び場になっていた。
今はどうか知らない。
神社の近所で怖い体験を二つした。


一つ目は神社のすぐ近くにあるお墓だ。
その日は友達の家から帰る途中で、そのお墓の前を通る道が一番近道なので通っていた。
もう日も落ちて暗かったので、自転車の電灯を点けていた。
出来るならわたしはその道を通りたくなかった。
特に何かある、というわけではないがお墓の横を一人通りすぎるのは小学生時代のわたしにとっては怖い体験だった。
友だちでも一緒にいて帰るなら心持ちも少しは違ったと思うが、その日は一人だった。
神社の前を通ってすぐにお墓がある。
お墓の前に差し掛かったときにそれは起こった。
わたしの自転車の電灯が消えたのだ。
心臓がドキッとし、すぐにドキドキと鼓動が早くなったのを憶えている。
先の十字路でお墓は終わる。
十字路まで自転車を早足でこいだ。
ちょうど十字路に差し掛かりお墓がとぎれたころ電灯がまた点いたのだ。
その一度だけの体験だったが、その当時はしばらくそこを通ることはしなかった。
二つ目は、神社のとなりにある古びた誰も住んでいない屋敷だ。
小学生時代は怖いもの見たさが強くあるものだ。
その古い屋敷は昼間でも中が薄暗く幽霊でも出てきそうな雰囲気だった。
わたしは友だちとともに冒険に繰り出した。
その古い屋敷を探検しようというのだ。
なぜか探検した内容をほとんど憶えていないのだが、屋敷の二階までいって戻ってきたと思う。
憶えている事と言えば、縁側にひな人形の首があったことと、その屋敷の中庭に大きな木で出来た十字架が立っていたことだ。
十字架はたしか3つあり、その日わたしたちが家の中で見た黒い影も3つだった。
あの日もこんな暑い夏だった。

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