ショートショート:おはやしが聞こえる

長崎瞬哉(詩人)

おはやしが聞こえる

夏に遠くから笛や太鼓のおはやしが聞こえてくると「ああ、お盆も近いのだな」と思う。
どこかで地元の人たちが練習をしているのだ。秋になると豊穣祭だろうか、やはりどこからともなくおはやしの音が聞こえてくる。わたしはそうした音の正体を勝手にお盆の練習だ、秋のお祭りだ、などと考えていた。

はて?わたしは一度でもおはやしの音をたてている連中の顔を見たことがあっただろうか?
真夜中、目が覚める。おはやしの音がどこからともなく聞こえてくる。
今日はたしか11月16日。いったい何の祭りだろう?こんな時刻に何が始まるのだろう?
気づくと、隣りで寝ていた妻と子がいない。

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