わたしの父は癌で死んだ。
父が亡くなる2ヶ月くらい前に、緩和医療の病院に移ることになった父を見舞いに行った。
その頃の父はまだ、普通に会話が出来た。
いつも通り見舞いに行って、病院で小一時間程過ごした。
帰り際、わたしは父にこう言った。
「何か欲しいものある?」
父はこう答えた。
「命かなー」
笑うに笑えない冗談だった。
「ちょっと売ってないかなあ」とでも言うしかなかった。
生前父は冗談をよく言ったが、この冗談ほどには憶えているものはない。
これが父の最後の冗談となった。
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