300字小説「センサー」

長崎瞬哉(詩人)
センサー

「カチッ」と音がして明かりが消えた。

ユキエはびっくりした。
毎度のことながら、この自動消灯するトイレには驚かされる。

仕事をさぼり、トイレで用を足すふりをしてスマホを見ていた。
トイレのセンサーは、「動いていない=誰もいない」と判断したようだ。

そろそろ仕事に戻るか。
ユキエが腰を上げようとしたとき、「カチャリ」トイレに誰かが入ってきた。
どうやら、ユキエの隣りの個室に入ったようだ。

ん?何か変だ。
トイレの明かりが点かない。

ユキエはセンサーを確かめるように立ち上がってみた。
「カチッ」と音がして、明かるくなる。
なあんだ。トイレを出たユキエは、隣の個室のドアが開いていることに気づいた。

誰もトイレにはいなかった。

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